鈴木を切る【ブログのネタ】

ニュースを観る侍 人間関係

 僕はブログの内容を書くときになって考えるのではなく、前もって考えておく。

 基本的には、自分が言いたいこと、次に皆が知りたいであろうこと。あとは皆と共感できる話。

 日常生活の中で、そういうものをなにか思いついたときに、スマホのメモアプリにさっとメモしておく。

 今では、かなりスクロールしないと最後までいかないくらいのメモがため込んである。

 例えばこんな感じだ。

 こんな風に書きためている。

 ちなみにこの中のいくつかはもう記事になっている。

 ブログを更新するとき、僕はこのメモを指で下から上にフリックし、まだ記事にしていないものを探す。

 そしてある日、気が付いた。

 鈴木を切る…?

 すごいシンプルなことを言っているようで、まったく意味が分からない。

他にも変なメモがあるけども、“鈴木を切る”ほどじゃない。

 誰かが勝手に書き込んだんじゃないかとと疑うほど意味不明だ。

 どういうつもりでこのメモを残したのかを思い出そうとしたけど、結局思い出せなかった。

 仕方なく推測してみる。

 そのまま文字通りに受け取るのなら、これはつまり、鈴木さんを切る、ということ。

 僕が刀だったり、包丁なんかを持って鈴木さんを切る。というリマインダー的メモということになる。

 たしかに、世の中に鈴木という名前の人は多い。そして、全員が全員、良い人間であるとは限らない。

 かといって、僕は侍ではない。鈴木容疑者のニュースを見て、「よし、拙者が斬ろう」とはならない。

ニュースをみる侍

 そうなると、知り合いの鈴木を切ると僕はメモした可能性が考えられる。

 僕も内向的な人間ではあるものの、多くの鈴木と関わってきた。

 当たり前な話だけど、同じ鈴木でも、それぞれは別人で、優しかったり、怖かったり、面白かったりと色々な鈴木という人間がいた。

 その中で、怖い鈴木のことはよく覚えている。

 その鈴木とは中学生の時に同じクラスだった。

 鈴木は運動部だったから日に焼けていて、その上強面で声がめちゃくちゃ大きい。僕はクラスが始まってしばらくたってもほとんど話さなかった。

 ところがある日、鈴木は授業が始まる前に、僕のところにやってきて、「消しゴムを貸してくれ」と言ってきた。

 僕はちょうど二つ持っていたから、新しい方を貸した。鈴木は大声で「サンキュー!」と言って自分の席に戻る。

 そして、僕は「意外といいやつなのかもしれない」なんてことを考えながら授業を受けた。

 しかし、その日の授業をすべて終わっても、また翌日になっても、翌週になっても、鈴木は消しゴムを返さなかった。

 中学生の僕は、きっと忘れているんだろうと思うも、鈴木は日に焼けていて怖かったので、なかなか言い出せなかった。

 しかし、時にタイミングというものは奇跡的に起こるもので、

 移動教室かなにかで教室から人がいなくなり、僕は鈴木とほとんど二人きりになった。

 鈴木は自分の机に座り、ぼけーっとしていて上の空だった。

 とんでもなくぼけーっとしていた。言うならば、鈴木の魂は抜けていた。

 僕はここしかないと思い、さりげなく近寄り、鈴木に言った。

「あの、消しゴムなんだけど…」

 僕はモゴモゴと喋ったけど、とにかく「消しゴム」とはっきり言おうと意識していた。

 そして鈴木が言う。僕はこの衝撃が今となっても忘れられない。

「消しゴム? 返さなくていいよ!」

 逆じゃん。

 しかし、当時の僕はその一言が言えなかった。

 なぜなら鈴木は日焼けしていて怖い。

 僕はそそくさと教室を去った。

 あれが冗談だったのか、ただ寝ぼけていたのか、それとも悪意のあるすっとぼけだったのか、それは今でもわからない。

 とにかく、鈴木と聞くと僕はこの出来事を思い出す。

 しかし、流石に今になって「そうだ、鈴木を切ろう。これはメモしておこう」だなんて思うはずがない。

 たかが消しゴムだし、鈴木も悪気はなかったかもしれない。なにより人を見かけで判断してはいけない。

 ただ、後日、こっそり彼の文房具を確認したら、僕が貸した消しゴムの尻にでかでかとサインペンで「鈴木」と書いてあった。

 日焼けした鈴木には注意してほしい。
 
 

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