井伊直弼から学ぶニートの生き方

歴史

 井伊直弼と言えば、安政の大獄を行い、桜田門外の変で死んだ人。

 その妙にスッといえる名前の語感から、全国の小中学生がダジャレの材料としてぼやっと記憶している。

 その記憶では、井伊直弼、桜田門外の変、大老、くらいしか情報がなく、「なんか偉いヤツだったんだな」というくらいしか印象がない。

 今回は、そんな謎に包まれた?彼の人生を深堀することによって、ニートとは何たるかを考えたいと思う。

17歳から32歳までニート生活

 井伊直弼は近江彦根藩第13代藩主の息子として生まれた。そのため、生まれも育ちもいいのだけど、なにせ14番目の息子だったために、藩主を継ぐどころか、養子に出るのでさえ難しい状況だった。

 18歳のときに一度他の藩から養子の誘いがあり、その面接的なものを受けるも、なぜか15番目の弟の方が受かってしまった。

そんな井伊直弼は、なかなか自分の将来が開けず、17歳から32歳まで城下の質素な屋敷で引きこもりニート的な生活をしていた。

 現代日本では、ニートとは15~34歳で、非労働力人口のうち家事も通学もしていない者と定義されている。
 
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 その定義からして、17~32歳まで引きこもっていた井伊直弼はキングオブニート伝説のニートと言ってしまってもいいだろう。

 もちろん当時にニートという言葉はない。当時は嫡男でありながら家督を相続できず、そのくせまだ実家にいる者のことを指す「部屋住み」という言葉があり、井伊直弼はこれに当てはまった。

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 17歳だった井伊直弼は質素な屋敷を「埋木舎」と名付けて、暮らしたわけだけど、その由来は「どうせ俺なんか枯れた木と一緒」という自虐的な精神であり、17際にしてはだいぶひねくれている。

 現在は観光スポットとなっており、大人300円、高校生大学生200円、小中学生100円で見学することができる。

 ニートの部屋が観光スポットになるとは、歴史ってこわい。

意識が高すぎるニート

 部屋住みとなった井伊直弼はその17~32歳の間に埋木舎で、ありとあらゆる教養を学んだ。

 歴史や地理、文学から始まり、書、絵、和歌、茶道、陶芸、乗馬、剣術、居合、槍術、弓術、 砲術、柔術。

 嘘つけ!といいたくなるラインナップだ。

 普通の江戸ニートなら、春画をコレクションしたり、ちょっとピンクな茶屋を渡り歩いたりするだろう。歌舞伎や見世物小屋もあるし、さいころ賭博などの賭博もあったはずだ。

 彼はそんな江戸時代の誘惑に負けずにひたすら猛勉強した。だいたい猛勉強しても、別にセンター試験があるわけでもないのに。いったいどこからその執念が湧いてくるのか。

 それはおそらく15男5女という大家族に生まれたためだろう。兄妹が20人もいるなんて、現代だったらテレビ局が殺到するレベルの規模だ。

 14番目とはいえ藩主の息子であり、漫画なんかでよくある継承戦的な空気がそこにはあった。立派にならなくてはというプレッシャーや俺は藩主の息子だというプライド、14番目の苦悩が執念の猛勉強の原動力だったのかもしれない。

 プライドが高いというのは、原動力を生むという良い面もあるけど、大概はデメリットのほうが大きい。

 「俺はもっとやれるんだ」という自己評価が高すぎて、自分で自分が分からなくなるし、失敗したときのショックも大きくなる。

 井伊直弼は屋敷を「埋木舎」と名づけたように、自分を自虐的に扱うことによって、自分のプライドの高さをコントロールしようとしていたみたいだけど、やはり怒涛のラインナップから分かるように野心を隠しきれていない。

 自分を埋もれ木と本当に思っていたのなら、こんなに学びはしなかっただろう。

 僕もニートになりたての頃は、時間を活かして勉強してみるか!と思い、とりあえず1世紀から勉強をしてみたものの、結局3世紀くらいから先に進めていない。

 ”膨大な時間をどう過ごすか” これはニートにとって切実に頭を悩ます問題だ。

 確かに有効活用できるに越したことはない。しかし、それではなんだか頭でっかちになってしまうというか、気が楽じゃない。

 やったりやらなかったりの生活をしていると、「膨大な時間は無駄に過ごしてこそ意味があるんじゃないか」というようなことを思うことがある。

 それを「拙者明日から本気出す」という怠け癖ととるか、「のんびりすることこそ人生」という人生の本質としてとるかは難しところだ。

 井伊直弼は膨大な時間を有効活用して過ごした。彼は「睡眠時間は4時間で足りる」という強気な言葉を遺している。

 これはおそらく「俺全然勉強してねえわ」というのと同じで、本当はスヤスヤだっただろうけど、いかに彼が効率厨であったかを表している。

 井伊直弼、意識が高すぎる…。

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